TBネタ。
私の場合は、ポルトガルで飲んだヴィーニョ・ヴェルデ(Vinho verde)。
初めから「名物を!」と意気込んで食べに行ったものは、もちろん旨いのだが、あらかじめ期待するものがあるだけに、思いがけない感動というのはない。けど、これは偶然に出会ったもので、その後再度味わうこともできていないので、非常に印象に残っている。
あれを飲まなければ、ワインに興味を持つこともなかった。
リスボンの町をぶらついて、腹ごしらえしようとそのへんの小料理屋に入ってメニューを見るまでは、そういうワインがあること自体知らなかったんだ。
「郷に入りては郷に従え」をバカ正直に行っているので、昼に酒もありだろう、飲むなら地元産のだろう、と決めていた。
観光客が多い界隈の店だったから、一応英語も使えた。どんなのがいいか訪ねたのか、それともこれは何だと訊いたのか、そこは記憶があいまいだが、ともかく私の質問に対する店員の答えが「フレッシュで若い」といった内容だったので、これなら私にもとっつきやすそうだと選んだ。
ハーフボトルで確か500円程度だった、と思う。手元に記録がないので定かではないけど、そんなに高くなかったのは確かだ。日本に帰ってきて、この値段ではレストランでグラスワイン1杯しか飲めないと知った。
とまれそうして初めて口にした「緑ワイン」は大きめの微発泡で私をびっくりさせ、口を爽やかにしてくれることで皿に山盛りの魚とポテトをおおかた平らげるのを助け、ついでに1時間ほどふわふわゆらゆらとした酩酊状態にさせてくれた。
白のヴィーニョ・ヴェルデは、軽く、グリーンアップルやレモンのように爽やかで、気持ち良く泡立ち、若い、ちょっと草のような香りを感じた。初心者にこれぐらいとっつきやすいワインはまずないだろう。
そのあとリスボン市内のばかでかいスーパーマーケットで滞在中に飲むためのを1本買い求め、土産として自分のために2本、違う種類のを買って帰った。ヴィーニョ・ヴェルデだけでもいろんな銘柄のものがずらりと並んでいて、一番安いのはフルボトル1本で2ユーロを切ってた。いやあ、これなら日常的に飲めるよなあ。テーブルワインじゃなく、ヴィーニョ・ヴェルデと名乗るからには、まがりなりにもDOCの要件を満たした品であるにも関わらず、だよ。
あー、免税範囲内で持ち込めるもうあと1本は、親への土産の10年ものポートワインだったな。琥珀がかった赤い色、良い香りで、それなりのもんだった。まったく喜ばれはしなかったけども……。
ともかくそういう次第で何本か飲んだけれど、あの料理屋で飲んだのが一番旨かった。未知のものに初めて触れる高揚感が多分にあったんだろうが、それを差し引いて考えることができないほど、あの味と体験は記憶の中で分かちがたく結びついている。
日本に帰ってきて探したけど、取り扱っているネットショップはごくわずかだった。銘柄を選択する余地もほとんどない。近所のワイン屋なんて論外。超マイナー。ポルトガルにワインなんて存在するの、ってな勢いだ。いや、もともとポルトガルで生産されるワインのうち1割しか輸出されていないというから、これは致し方がないか。
それに、ヴィーニョ・ヴェルデは、売れずに1年セラーに置いときました……じゃあ、ただダメになるだけだから、熟成して良くなるなんてことはないから。
一度、日本で取り扱いのある中では一番メジャーなやつを1本注文してみたのだけど、……ごめん、水っぽい。これでは、ちょっと。
そのとき以来、ずっと口にしていない。
また飲みたいと思ったらそのときは、足を運ぶしかないだろうな、と思っている。
いい季節になったら。のんびりしたくなったら。ポルトガルはいいところだ。
外食…… 346
内食…… 701



